患者さんができる症状緩和のコツ
これまで症状緩和という視点は、医療者として『どうしたら患者さんが望むレベルまで症状緩和ができるのか』という知識やスキルなどばかりでした。
患者さんからの相談に応じる中で、患者さん側でも症状緩和に繋がる大事なポイントがあるので、今回はそれについて記事にしてみますね!
病気や治療からくるさまざまな症状とは
症状緩和といっても、どんな症状のこと?と思われる方もいらっしゃるかもしれないので、ざっと主な症状をあげてみますね。
- 疼痛(痛み)
- 嘔気嘔吐、悪心
- 呼吸困難感(息苦しさ)
- 食欲不振
- 腹部膨満感(お腹の張り)
- 便秘・下痢
- しびれ
- 浮腫(むくみ)
- 倦怠感(だるさ)、疲労感
- 不眠
- 気分の落ち込み
- イライラ(苛立ち)
- 幻聴、幻覚
これら以外にもあると思いますが、ご自分と照らし合わせてみてどうでしょうか?
もしこれらの症状があるとしたら、ちゃんと医師に伝えることができているでしょうか?
症状を伝えることに遠慮はしない
日本人て、ちょっとした症状やつらさってまずは我慢っていう方も多いんですよね。我慢は美徳というお国柄だったことも影響していると思うのですが…。
少し我慢すればよくなる症状や病気ならそれでもいいのですが、我慢しても何の得にもならない、それどころか我慢する方が寿命が縮むとしたら?
患者さんと関わる中で一番強く感じていることは、症状を我慢する人が多いこと!!
程度にもよるのだと思うのですが、あまり診察の時に自覚している症状を伝えない方もいらっしゃいます。
患者さんの中にはどうやって医師に伝えたらいいのかわからない方も多いのかもしれませんね。
どんな症状を伝えればいいの?
どの程度になったら?
ある程度は我慢しなきゃいけないでしょ?
副作用は少しは我慢しないといけないよね?
病院では「なんでも言ってくださいね」と言われても、いつ・何を言えば良いのかわからない患者さんて多いんですよね。
ポイントは、普段感じていない症状が出たら、程度に関係なく診察の時にしっかり伝えましょう!!ということです。
この程度のことを言っても良いのかな?
そんなに大したことないのでは?と思うことでも、医師にしっかりと伝えていくことが症状緩和の近道です!
症状の伝え方
では、今感じている症状をどのように伝えたらいいのでしょうか?
自分の症状を他人に伝えるのは難しかったりもします。それは患者さんの主観的なものであるからです。
自分にしかわからない症状の様子は、どんな表現でもいいので自分の言葉で伝えることがポイントです。
医師や看護師からは「数字で教えてください」と言われることがあります。
【痛みのスケール(NRS)】
全く痛くない状態を「0(ゼロ)」、今までに体験した中でこれ以上の痛みはない最高の痛みを「10」とした場合、今の痛みはいくつ?
痛みの程度を数字に置き換えて評価する方法です。
疼痛以外でもほとんどの症状はスケールといって症状の強さを数字に置き換えて表す方法があります。
医療者にとっては一般的ですが、患者さんからすると症状の強さを数字に置き換えるという作業そのものが難しいと思います。
感覚的に置き換えられるなら問題ありません。数字に置き換えることが難しい場合は、数字にこだわる必要はないので、他の方法で表現しましょう!
症状緩和の目的は生活への支障を最小限にすること
今ある症状が、普段の日常生活にどのように影響しているかという視点で見てみてください。
そのポイントはただひとつ!
今までできていたことが、ある症状のためにできなくなっていることは何か
症状が楽になればできるようになること
生活の中でできないと困ること
いろいろあると思います。
- 仕事に集中できない
- 家事ができない
- 夜眠れない
- 食事が摂れない
- 外出できない
もっと細かく言うと、お箸が持てない、ペットボトルの蓋を開けられない、静かに座っていることが難しいなど、詳細に伝えられるとベストです。
このように症状のために支障が出ていることについて伝えてみるといいですよ。
症状の変化もその都度伝える
鎮痛薬やその他の症状への対処によって、どのように症状が変化しているかもしっかり伝えていくようにしましょう。
症状が変わって何ができるようになったのか、できないままなのか。医師にとって症状への対処や生活の質を改善するために必要な情報です。
自分の身体を知って症状と生活の変化を把握することが、症状緩和のコツとも言えます。
そして自分の身体のことを医師にしっかり把握してもらうことこそ、症状緩和の近道です!
つらい症状は我慢しない方がメリットが多い
化学療法を受けている人も治療を卒業して症状緩和に専念している人も、つらい症状は我慢しないことが身体にとってメリットでしかありません。
それは、早く対処する方が症状緩和も早いことと、症状が悪化して体力を消耗することが避けられるからです。特に治療中の方は体力が落ちてくると、治療の継続を危ぶむ可能性も出てきます。
どんな症状も生活の中の活動量を下げるので体力低下や消耗に繋がってしまいます。それは化学療法を継続するための条件である、1日の半分以上をベッドから離れて活動していることに直結してくるからです。
多くの患者さんは、できるだけ治療を続けたいという願いを持っているはずです。そのためにはご自分の身体をしっかりと知り、その情報を医師に伝えることが必要です。
また、痛みを我慢せず積極的に症状緩和をすることは、食欲の改善や体力の回復など以外にも、ストレスの軽減も期待でき、免疫力が保たれる可能性もあります。
我慢せず、医療者への気兼ねもせず、ご自分の身体のことを遠慮なく伝えてくださいね!