【化学療法をやめたい】治療の中止を考えるときに意思決定するためのポイントを紹介!
患者さんから「もう治療をやめようと思っている」という相談がたびたびあります。
治療の効果がなく次の治療もないという場合は、医師から治療を終わりにしようという相談がありますが、患者さんから治療の中止を申し出される場合に一番多いのが治療の効果はあるのに『副作用がつらいから』というものです。
決して少なくない相談です。
私が患者さんとご相談するときに意識するポイントをご紹介しますね。
なぜ治療をやめたいと思うのか
まず「なぜ治療をやめたいと思うのか」ここを具体的にお聞きします。
多くは『副作用がつらい』ということなのですが、それ以外にも理由を言われることもあります。
ただ副作用がつらいということだけでは、私もそうですか、とは言えないので、副作用のつらさももっと具体的にお聞きします。
副作用対策が十分でないかもしれない
化学療法で頻度が高い副作用としては吐き気、食欲不振、倦怠感などです。
対処できる場合もあればできない場合もありますが、まずはしっかりと副作用対策が行われているのかを確認します。
患者さんによっては副作用がもう少し楽になれば、治療を続けてもいいと思われている方も多いので、副作用対策は治療継続にはとても重要になってくるんですね。
今できる副作用対策が確実に行われているのかを評価して、まだ他の手立てがあるのなら出来うる対策を全て行えるように医師と相談していきます。
治療中、つらく感じる時間と比較的楽に過ごせる時間の割合
治療をやめたいと思われるほど副作用をつらいと感じている場合、治療期間中のほとんどを『つらい』と感じながら過ごしていることが多いんです。
そこで私が聞くことは…
治療と治療の間の時間は…
- つらい時間の方が長いですか?
- つらくない時間の方が長いですか?
(症状があってもやり過ごせるくらいの体調ですか?)
なぜこの質問かというと、化学療法は何のためにしているのかということです。
化学療法は術前後の補助治療として行う場合もありますが、多くは再発進行癌に対する延命目的の治療です。
つまり、癌を治すことはできないけどできる限り延命を目指しましょう、という治療目的です。
そしてこの『延命』ですが、治療の副作用でほとんどを自宅で横になって過ごすだけの時間となってしまった場合、果たして患者さんにとって生活の質は良いものと思えるのかということを考えていただきたいのです。
患者さんは生きたいから治療をしているというのは当然だと思いますが、ただ生きていればいいということなのでしょうか。
生きたいと思う理由があるはずです。
- 子どもや孫の成長を見守りたい
- 家族と楽しい時間を過ごしたい
- 旅行に行きたい
など
患者さんによっては寝たきりでもつらい時間ばかりになってもいいから一日でも長く生きていたいという人もいれば、そのような状態では生きている意味がないから治療をやめたいという人もいます。
患者さん自身が何を大切にしたいかで意思決定は変わってくるのです。
患者さんはどこでどう過ごしたいと思っているのか
ただ治療をやめたいと患者さんが希望したから、というだけで簡単に治療をやめるという決定をするわけにはいきません。
そこで必ず患者さんに確認するのですが
- 化学療法の目的を理解しているか
- 治療をやめるということがどういうことか理解しているか(病気の進行)
- これからの過ごし方をどのように考えているか
①どこで、どのように過ごしたいと思っているか
②やりたいこと、行きたいところがあるか - 人生の最終段階のところまでイメージできているか
上記のことが患者さんの中ではっきりとしていれば、治療をやめるという選択も間違ってはいないのだろうなと思います。
そしてこれらを家族としっかりと話し合っていること。
私は治療をやめるということにも目的が必要だと思っています。
こんな風に過ごしたいから
治療の副作用でほとんど横になって過ごす生活は嫌なんです
まだ迷っている間は結論を出さない
治療をやめたいと思っていてもすぐには決断できないこともあります。
その場合にはすぐに答えを出さず、治療を続けながら考えることをお勧めしています。
治療のたびに「今回はどうしようか?」と患者さんと相談しながら決めていきます。
治療の中止はいつでもできますが、治療を再開したいと思ったときに再開できるかどうかはわからないからです。
治療をしないということはその間に病気も進行するということであり、治療を再開したいと思ったとき病状次第では再開ができないこともあるからです。
大切な意思決定を後悔しないために悩みには根気よく付き合って私も一緒に悩みます。
治療をやめた方が生活の質が高まることもある
治療の効果が人それぞれであることと同じように、治療をやめた場合もどのような病状の変化があるかは人それぞれで一概には言えません。
ただ、体調が良くないのに無理して治療を続けるよりも、タイミングによっては治療をやめた方が予後が延長すると言われることもあります。
これは治療をやめることによって食欲不振や倦怠感などのつらい症状が緩和され、よく食べよく眠り、そして自分のしたい生活が送れるという満足感の高まりによって過度なストレスから解放されるからなのではと言われています。
食事が摂れることは体力の維持にも繋がりますし、したいことができる生活は精神的充足感にも繋がります。
楽しい、幸せだと思える生活が送れることの意味を見いだせることは、人生を全うする上でとても大切なポイントになってくるでしょう。
治療をやめたいと思ったときの意思決定のまとめ
がん治療においてはどの選択も決して間違いではありません。
正解も不正解もないのでよけいに迷うんですよね。
だからこそ、自分の人生を生きるために、これからの時間をどのように過ごしたいかということについて、もっと真剣に考えて欲しいのです。
- 治療をやめたいと思う理由がしっかりと言える
- 副作用がもう少し緩和できれば治療を続けたいと思うか
- 生活の中でつらい時間とつらくなく過ごせる時間のどちらが長いか
- これからの過ごし方を具体的にイメージできている
これらを踏まえて、治療をやめることが患者さんにとってベストなのかを一緒に考えています。
あなたの場合はいかがですか?