【治療中の副作用対策:悪心嘔吐編】つらい症状とうまく付き合う方法
化学療法ではさまざまな副作用があり、どうやってうまく付き合っていくかとても悩まされますね。
最近では副作用対策に使われるお薬の種類も格段に増え、効果も得られるようになりました。
それでも万全の体調で過ごすことは難しいことが多くあります 。
そうは言っても生活していかなければならないし、つらい時間が長く続くことは治療を頑張る意欲もなくなってしまいます。
今回は症状とうまく付き合いながら生活することについてご紹介します。
化学療法の主な副作用
化学療法の主な副作用はご存じの方も多いかと思います。
- 悪心嘔吐(嘔気)、食欲不振
- 倦怠感、疲労感
- 末梢神経障害
- 脱毛
- 手足症候群、爪囲炎 など
使われる治療薬の種類にもよりますが、今回は悪心嘔吐について考えてみますね。
悪心嘔吐と上手な付き合い方
ムカムカは程度の差はあれどどうしても避けられない症状のひとつですが、嘔吐まで症状が出る方は希になりました。
常にムカムカしていてつらい
食欲も落ちて食べられないじゃん!
そんなつらさを抱えながらも生活していかなければならない状況で、どんなことを工夫すればいいのか一緒に考えていきましょう。
制吐剤の種類はたくさんある
今では抗がん剤の点滴をするときに事前に制吐剤を内服あるいは点滴することが多くなりました。
翌日以降も2~3日は続けて制吐剤を内服できる場合もありますし、嘔気時に頓用で使えるように処方されることもあります。
最近の制吐剤は種類も増え、作用機序も違う複数のお薬を使われることがほとんどです。
- 5-H2受容体拮抗薬(グラニセトロン、パロノセトロン)
- ステロイド(デキサメタゾン)
- NK1受容体拮抗薬(アプレピタント、ホスアプレピタント)
- ドパミン受容体拮抗薬(ドンペリドン、メトクロプラミド)
- 多受容体作用抗精神病薬(オランザピン) など
これ以外にも抗不安薬や抗精神病薬なども使われます。
なぜ嘔気を感じるのか、上記リンク先に症状の出現機序が記載されているので、関心のある方はご覧ください。(専門的で難しいです)
抗不安薬や抗精神病薬と聞くと「え?精神科で使う薬?」と心配される方もいますが、制吐剤として使用するので不安に思われなくて大丈夫です。
どの制吐剤を使用するかは治療のレジメンや症状の様子によります。
ここでは治療が終わったあとご自宅で過ごす間の嘔気対策について考えてみます。
悪心嘔吐に対する生活上の工夫
工夫と言ってもどうしても一般的な事柄になってしまうので申し訳ないのですが、少し読み進めていただけたら嬉しいです。
処方された薬を上手に使いこなそう
まずは処方された薬を指示通り使用することが大切です。
- 治療後2日間内服する場合
- その後も嘔気時に頓服で飲めるようにもらった薬
患者さんは症状を我慢したり、どの程度の症状で薬を飲んで良いのかわからないと、あまり薬を使われない方もいます。
まずは症状が気になっているようでしたら一回薬を使ってみましょう。
それで症状が軽快すれば次からもご自分の判断で使えるようになりますね。
薬を使うタイミングがわからないときには、医師や看護師、薬剤師に遠慮なく相談しましょう。
制吐剤を使っても症状がすっきりしないということも多くあります。
薬を使いながら無理のない過ごし方を考えることが必要です。
症状の強さの変化を自分で観察する
ご自分で治療経過中の症状の出方、強さのパターンを知ることです。
これは体調の良い時期、時間帯に活動できるようになるためです。
- 1日の中でもムカムカが強い時間帯、比較的弱めな時間帯を知る
- 治療を受けてから何日間くらいで症状が出るか
- 何日後くらいから症状が軽くなってくるか
- つらい時期はどの辺りか
- 動けるようになるのはどの辺りか(外出や食事など困ることが減ってくる時期) など
症状が強めでつらい時期は無理をせずできる範囲で過ごします。
ご家族に頼ることを気兼ねして無理してご自分でいつものようにやってしまう方もいらっしゃいますが、こういうときこそご家族に頼ることをやってみてください。
そして体調が落ち着いてきたら少しずつご自分でやることを増やしてみましょう。
食事の工夫を考える
おおよその方は嘔気のために食欲も落ちて食べられないのではないでしょうか。
- 食事の少し前に制吐剤を飲む
- 症状が比較的弱めの時間帯に食事を摂るようにする
- 1回の食事量を減らしてこまめに食べられるように食事回数を増やす
- 栄養バランスのことは考えずに食べられるものを優先して食べる
- 味付けの工夫をする(さっぱりとしたもの、など)
- ご家族は食べることを促すよりも、患者さんがいつでも食べられるように手軽なものを用意しておく
など
食事があまり食べられない様子を見るとご家族は心配になります。
お気持ちはわかりますが、食べたくても食べられない患者さんは、食べろ、食べろと言われることが苦痛になってしまいます。
ですから、食べることを促すよりも、食べたいときに食べられる環境をどうしたら作れるか、という視点でサポートしていただけるといいと思います。
口腔ケアはしっかりと行う
口の中がさっぱりするだけでも気分が変わります。
症状が強いときは歯磨きで症状を強くしてしまうこともあるでしょう。
歯磨きのタイミング、ブラッシングの仕方も工夫できます。
- 症状が弱いときに歯磨きをする
- つらいときは磨ける範囲で済ます
- 洗口液も併用する
など
洗口液はノンアルコールのもの、刺激が弱いものなどがオススメです。
ただの水道水でもいいですし、レモン水では清涼感がありますね!
口腔ケアは化学療法を続ける中ではとても大切なケアになります。
悪心があって食事が摂れないときもできる範囲で続けることが必要です。
治療中の症状は診察のたびに医師に伝えよう
悪心嘔吐に限らず治療中の症状はご自分でしっかり観察し、医師に伝えることができる人ほど治療が長く続けられるという報告もあります。
症状の程度によって副作用対策を強化することに繋がりますし、症状への対応がきめ細やかになり患者さんのつらさも軽減するからです。
病院によっては副作用チェックシートのようなものが渡されるところもありますし、そういったものがない場合でもノートに日々の体調を書き記すことで医師に伝えやすくなりますのでお試ししてみてください。
インターネット情報や知人のオススメは注意して受け取ろう
最近はほとんどの患者さんはご自身やご家族がインターネットで情報を集めてきます。
この方法がいいと載っていた
知り合いがこれをやったらうまくいった、体が楽になった
それらを受け取る前に一度立ち止まって考えてみて欲しいのです。
それって本当?
そもそもインターネット上での情報はまずは疑ってみることが大切です。
その情報の出所は信頼できるところですか?
特にサプリメントや民間療法の場合はデタラメであることがほとんどです。
そしてお知り合いからの情報も鵜呑みにしないでください。
もちろんお知り合いの方はあなたのためを思って言ってくれているのでしょう。
しかし、病名の違い、同じ病名であっても病状は違います。
お薬であっても効く人効かない人がいるように、お知り合いの方は効いたかもしれないけどあなたに効くとは限らないのです。
でも効果があると聞くとどうしても試してみたくなりますよね。
そのときには必ず医師に相談してください。
特にサプリメントや民間療法の場合治療に影響が出る可能性もあります。
情報の正しさも医師が教えてくれるでしょう。
独断で試すことだけはやめてくださいね。
まとめ:治療中の悪心嘔吐と上手に付き合っていく方法
一番の基本は処方された薬を上手に使いこなすこと
その上で生活の仕方の工夫をしていくこと
特に症状の観察はぜひご自身で行ってください。
治療中の症状の種類や程度の変化は治療を繰り返す中でパターンが掴めてきます。
症状が強めの時期はこう過ごそう
症状が落ち着いてきたらこう過ごそう
ご自身でリズムを立て直すことが症状とうまく付き合っていく秘訣です。
健康なときと同じように過ごすことはできないかもしれないけれど、少しでも普段と変わらない日常が過ごせるように一緒に工夫の仕方を考えていきましょう!
ここでは一般的なことしか書けません。
なぜならすべての人に共通して効果があること、というものがないからです。
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