【人生会議】元気なうちからどう過ごしたいか周りの人と話し合おう
みなさんは厚生労働省が進めている『人生会議』というものをご存じですか?
これは、アドバンスケア・プランニング(ACP)を日本語に置き換えたものです。
【「人生会議」とは?】
もしものときのために、あなたが望む医療やケアについて前もって考え、家族などや医療・ケアチームと繰り返し話し合い、共有することです。
人生会議とは
厚生労働省が策定した「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」があります。
人生の最終段階における医療・ケアについては、医療従事者から適切な情報提供と説明がなされたうえで、本人と医療・ケアチームとの合意形成に向けた十分な話し合いを踏まえた本人による意思決定を基本とし、多専門職種から構成される医療・ケアチームとして方針の決定を行うことが重要です。
厚生労働省では、人生の最終段階を迎えた本人や家族等と医療・ケアチームが、最善の医療・ケアを作り上げるための合意形成のプロセスを示すものとして、「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスガイドライン」を策定しています。
どのような医療を受けたいか、どのような生活を送りたいかは、患者さん本人の意思が尊重されるということを示しています。
自分で自分の希望を伝えられない状態
つまり意識がなくなって答えられない状態のとき
患者さんの意思を代わりに伝えてくれるのは主には家族になります
大切な意思決定のときに患者さんの意思を伝えられないと、望まない結果になってしまう可能性もあります。
そうならないように元気なうちからご家族や医療者など、周りの大切な人と話し合っておこうということなんです。
どんなことを話し合う必要があって、どんな選択があるの?
もしものとき、といってもその場面に遭遇したことがない場合は、何を話し合って、何を決めればいいのか全く想像がつかないということもあるでしょう。
病気を治す治療の手段がなくなったとき残り少ない時間をどう過ごすのか、ということですが、考える場面をいくつかあげてみたいと思います。
- 食欲が落ちて食べられる量が減ってきた
- 自分で自分のことができなくなりつつあって自宅での生活が大変になってきた
- がんに対する治療ができないと言われたので(化学療法の中止)、延命処置をどうするか医師から問われた
など
食欲が落ちて食べられる量が減ってきた
食事が減ってきた場合、病状の進行とともに食欲が落ちて食事量が減ってくるのは自然の経過です。
ご家族は患者さんが食べないことに不安が強まり、どうにか食べてもらえないかと躍起になることが多いです。
しかし、食べないことで体のバランスを取っているので、患者さんにとっては家族の食べて欲しいという願いは逆に酷となる場合が多いです。
この場合、食べられない分の点滴をするのかどうか、が選択肢になります。
食べられないことを自然の経過と捉えて点滴はしないという選択をするか
脱水にならない程度の最低限の点滴をするか
などがあります。
自分で自分のことができなくなりつつあって自宅での生活が大変になってきた
この場合は、どこで過ごしたいか、という療養場所を考えることです。
選択肢としては
- 自宅
- 介護施設
- 病院
が主になりますが、病院は基本的に医療行為がないと入院できないことが多いです。
- どのような状態までは自宅
- どうなったら介護施設または病院
など、状況に応じて考えていくことをお勧めします。
病院といっても
- 今まで通っていた病院
- 自宅近くの病院
- 一般病棟または緩和ケア病棟
患者さんが望む場所やご家族が面会に行きやすい場所などを考慮して決めておく方がいいですね。
がんに対する治療ができないと言われた(化学療法の中止)ので、延命処置をどうするか医師から問われた
いずれ病気が進行してお看取りが来るのも自然の経過です。
呼吸が弱くなり
血圧が下がり
やがて心臓が停止する
とても悲しいことではありますが、これは誰にでも訪れるできごとです。
このときに、心肺蘇生を望むのかということを医師から尋ねられることになります。
もちろん、癌の自然な経過での変化ですから心配蘇生をしても元気に回復するということはありません。
なので医師は決して心肺蘇生を勧めることはないでしょう。
ただ、患者さんとご家族と医師との間で穏やかに見守りながらお看取りを行う、という合意を得ておくことが、万が一のとき無用な医療を受けないことに繋がってきます。
他にもいろいろな場面が想定されますが、上記3つの事柄は最低限ご家族と話し合ってみてください。
話し合いは何度も繰り返そう
希望する内容というのは状況が変われば変化するものです。
一度話し合った内容をその通り守らなければならないということはありません。
希望が変わることは決しておかしくないことだからです。
ですから、折に触れて何かのタイミングごとに話し合いを繰り返しておくことが重要になってきます。
今のあなたの考えに近い希望をご家族と医療者と共有しておきましょう。
まとめ
私は普段患者さんやご家族と接している中で、患者さんご自身が自分のこととして病気のこと、これからの人生のことを主体的に考えていくことの必要性を強く実感しています。
しかし、患者さんと関わる中で
「よくわからないから全部医師にお任せする」
「家族が決めてくれたようでいい」
「とにかく長生きすることを望むから、そういうことは考えない」
という方が非常に多いんです。
それではあなたの人生を生きることになりますか?
わからなくてもたくさん医療者と相談してください。
もし病気になる前にこの記事を読まれているなら、今からご家族と話し合ってみてください。
当事者になってからでは目の前の病気のこと、治療のことで頭がいっぱいで冷静に家族と話し合えない、ということも実感しています。
みなさんは日頃からご家族と話し合っていますか?
遠い先のことと後回しにせず、話し合えるときに少しずつ相談しておきましょう!